(第12回・最終回)コウモリ(後編)――夫婦関係調整

ただいま調査中! 家庭裁判所事件案内(高島聡子)| 2024.09.03
2024年度前期朝ドラ『虎に翼』のモデルとなった三淵嘉子が、その設立に関わることになる家庭裁判所。戦後まもなく産声を上げた、社会的弱者のための裁判所では、令和の今、どんなことが起きているのでしょうか? そして「家庭裁判所調査官」とは、どんなお仕事?
普段は手続非公開のベールに隠れている“中の人”が、リアルな現場の点景をお伝えします。
(事件はすべて、家裁に係属する事件の特徴を踏まえて創作した架空のものです)

(毎月上旬更新予定)

◆この話の前編(「(第11回)コウモリ(前編)――傷害」)はこちら

卒業

ダイの在宅試験観察は約3ヵ月続いた。

その経過は順調とは言いがたかった。ダイには、官補が用意したアンガーマネジメントのワークシートに毎回取り組ませたが、母との関係が落ち着かない。試験観察中、ダイを落ち着かせなければと気負う母は、以前よりもダイの生活のあれこれに干渉するようになった。母とケンカになるとダイは勝手に父宅に泊まりに行ってしまい、母から「ダイが家出した」と電話がかかってくる。ダイがまたふらりと母宅に戻ってくる頃には、最初のケンカの理由はうやむやになっている。

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について

高島聡子(たかしま・さとこ)
神戸家庭裁判所姫路支部総括主任家庭裁判所調査官。
1969年生まれ。大阪大学法学部法学科卒業。名古屋家裁、福岡家裁小倉支部、大阪家裁、東京家裁、神戸家裁伊丹支部、京都家裁、広島家裁などの勤務を経て2023年から現職。現在は少年、家事事件双方を兼務で担当。
訳書に『だいじょうぶ! 親の離婚』(共訳、日本評論社、2015年)がある。