能登半島地震に見る災害ボランティアの課題──「受援力」再考(大脇成昭)
法律時評(法律時報)| 2024.08.27
世間を賑わす出来事、社会問題を毎月1本切り出して、法の視点から論じる時事評論。 それがこの「法律時評」です。
ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。
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(毎月下旬更新予定)
◆この記事は「法律時報」96巻10号(2024年9月号)に掲載されているものです。◆
1 ボランティア抑制の呼びかけ
大規模自然災害の復旧段階において、いまや欠かせない存在となった災害ボランティア。しかし2024年元日に発生した能登半島地震に際しては、その人手不足がクローズアップされた。要因のひとつと指摘されたのが、個人が被災地へ赴くことを抑制する呼びかけである(石川県の災害対策本部会議での同年1月5日の知事発言など)。そこから「行かないことが支援」などの言葉も広がり、その後、ボランティアが集まりにくい状況を長期化させたとの指摘もなされた。またさらに、このような行政による「規制」が、ボランティア本来の特性である自主性・自律性を失わせるとの批判もあった。
しかしこの抑制の呼びかけには当然、それなりの理由があった。すなわち能登地域の道路が随所で寸断され、救援に向かう人員や、緊急に必要とされる物資の輸送を優先させる必要があった。それゆえに、当初の呼びかけが一概に誤りだったとはいえない。