結婚と事実婚:子どもへの人的資本投資の視点から

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2024.09.30
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Adamopoulou, E., Hannusch, A., Kopecky, K. and Obermeier, T.(2024) “Cohabitation, Child Development, and College Costs,” Working Paper.
$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

御子柴みなも

はじめに

過去 50 年間、アメリカにおいて法的な婚姻関係を結ばない同棲1)を選択するカップルの割合 (同棲率) は上昇傾向にあるが、子どもの有無と学歴によって異なる傾向が見られる。図 1 は、1968 年から現在に至る過去 50 年間のアメリカにおける、同居カップルの中で結婚よりも同棲を選ぶカップルの割合を示している。子どものいないカップルの同棲率の上昇トレンドは学歴に関係なく同様であるが、幼い子どものいるカップルの間では、低学歴 (非大卒) のカップルの方が同棲を選択するトレンドが顕著である2)。なぜ、学歴によってカップルの結婚と同棲をめぐる選択が異なるのだろうか? また、結婚と同棲の選択は子どもの将来の教育水準や人的資本蓄積にどのような影響を与えるのか? 今回紹介する論文 (Adamopoulou et al. 2024) は、カップルのあり方が子どもへの教育投資と学歴に与える影響に着目し、教育水準の高いカップルが同棲よりも結婚を選択する理由を考察する。

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脚注   [ + ]

1. 日本では事実婚とも呼ばれる。
2. 詳細は原論文を参照されたいが、学歴グループにおける人種構成をコントロールした場合でも、図 1 と同様の学歴・子の有無別の同棲・結婚トレンドが見られる。