前科のある労働者の雇用

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2024.11.29
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Cullen, Z., Dobbie, W. and Hoffman, M.(2023) “Increasing the Demand for Workers with a Criminal Record,” Quarterly Journal of Economics, 138(1): 103-150.
$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

河原崎耀

はじめに

過去に犯罪をした人 (前科がある人) の就職は難しい (Pager 2003; Agan and Starr 2017)。アメリカでは 2008 年時点で投獄されたことのある人の失業率は $27\%$ と、$25\%$ 程度まで上昇した 1930 年代の世界恐慌時のアメリカ国内の失業率を含め (経済企画庁 1982)、どの時代の失業率より高かった。イギリスでは就職時に無犯罪証明書の提出が求められることがあり、政府が「Disclosure and Barring Service (DBS) check」というシステムを提供している。日本でもこのようなシステムを、特に保育や教育の分野において性犯罪の前科がある者の就職に際し導入しようとする動きが進んでいる (日本版 DBS)。その一方で、無職者の再犯率は有職者よりも高く (法務省法務総合研究所 2020)、前科がある者の再雇用は再犯防止や社会復帰には重要であると考えられる。

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について