(第13回)病んでいる人が家族の中でいちばん弱いわけではない

プロ精神科医あるあるノート(兼本浩祐)| 2025.02.14
外来のバックヤード、あるいは飲み会などフォーマルでない場で、臨床のできる精神科医と話していると、ある共通した認識を備えていると感じることがあります。こうした「プロの精神科医」ならではの「あるある」、言い換えれば教科書には載らないような暗黙知(あるいは逆に認識フレームの罠という場合もあるかもしれません)を臨床風景からあぶり出し、スケッチしていくつもりです。

(毎月中旬更新予定)

ある講演で心理学者の河合隼雄先生が言われていた印象深い言葉があります。精神的に病んでいる人は必ずしも家族の中でいちばん弱い人ではない、むしろときには家族の中でいちばん精神的に強い人が家族の人柱のようになって病むことがあるのだ、というものです。

もちろん、精神的に病むということのうちには、からだが病む(つまりは脳が病む)ということの延長線上にあることがらも少なからずありますから、この議論が成り立たない場合もあると思うのですが、少なくともカウンセリングが主戦場になるような場合には相当程度に正鵠を射ている言葉ではないか、と聞いたときに思ったものです。

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兼本浩祐(かねもと・こうすけ)
中部PNESリサーチセンター所長。愛知医科大学精神神経科前教授。京都大学医学部卒業。専門は精神病理学、臨床てんかん学。『てんかん学ハンドブック』第4版、『精神科医はそのときどう考えるか』(共に医学書院)、『普通という異常』(講談社現代新書)など著書多数。