企画趣旨(早津裕貴)/能登半島地震・奥能登豪雨における法的課題—被災地首長・自治体職員への聞き取り調査を通して(能登半島地震と法研究会)(特集:能登半島地震で起きたこと—災害時の法的支援のこれからを考える)
◆この記事は「法学セミナー」842号(2025年3月号)に掲載されているものです。◆
特集:能登半島地震で起きたこと—災害時の法的支援のこれからを考える
令和6年元日に発生した能登半島地震。発災から現在に至るまでの震災対応に於ける法的課題を、現地からのルポを踏まえ分析する。
—編集部
企画趣旨(早津裕貴)
2024年1月1日に最大震度7という規模を伴って発生し、津波も相まって能登地域に甚大な被害をもたらした能登半島地震は、震災とは切っても切り離せない関係にある日本という地に改めて様々な課題を突き付けている。さらに奥能登地方は、同年9月21日から発生した奥能登豪雨によって重ねての発災に見舞われ、一層困難な課題に立ち向かわざるを得ない状況に置かれている。
本特集は、地震発生から1年余りが経った今、能登半島を襲った災害、また、その復旧・復興過程について、現場での対応状況や諸課題を伝えるルポをはじめ、従来から災害関連研究にも携わってきた様々な分野の研究者による論考、また、被災地の石川県に所在する金沢大学の法学研究者らが現地から得た情報等を基に法的・政策的課題を論じる論考によって構成されている。
本特集はまず、金沢大学の法学研究者グループ(「能登半島地震と法研究会」)が現地への聞き取り調査によって得た情報をルポ的にまとめた論考に始まる(本号4頁以下)。本特集では当初、被災地の首長等自らが、その取組みや諸課題を直接伝える論考の掲載を目指していたが、重ねての発災によっておよそ実現困難となり、研究者グループによるまとめに代えることとなった。しかし、これについても、非常に多忙な状況下、また、重ねての発災に見舞われたにもかかわらず、貴重な時間を割き、意見交換を行っていただいた自治体関係者の皆さまの協力あってのことであり、この場を借りて心より感謝申し上げたい。さらに現地ルポとして、現地で発災を体験し、その後も被災者対応にあたっている金沢弁護士会災害復興支援WGの一員でもある弁護士による論考(本号10頁以下)、そして、現地で災害対応にあたる公務員の声を伝える職員団体関係者による論考が続き(本号14頁以下)、災害への対応状況や現場で生じている課題の一端をお伝えする。