(第2回)求積法のない積分論
数学の泉(高瀬正仁)| 2018.11.02
数学に泉あり。数学は大小無数の流れで構成されていて、今も絶え間なく流れ続けている雄大な学問ですが、どの流れにも源泉があり、しかもその源泉を作った特定の人物が存在します。共感と共鳴。数学の泉の創造者たちの心情と心を通わせることこそが、数学を理解するという不思議な体験の本質です。そこで数々の泉を歴訪して創造の現場に立ち会って、創造者の苦心を回想し、共感し、共鳴する糸口を目の当たりにすることをめざしたいと思います。
(毎月上旬更新予定)
$\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$
オイラーの著作に「解析学 3 部作」があり,40 代のはじめから 60 代のはじめにかけて,おおよそ 20 年の間に刊行されました.刊行年順に並べると,
『無限解析序説』(全2巻.1748年)
『微分計算教程』(全1巻.1755年)
『積分計算教程』(全3巻.第1巻は1768年,第2巻は1769年,第3巻は1770年刊行)
というふうで,全 6 冊の大きな著作です.序説の第 1 巻は関数の理論,第 2 巻は関数の理論に基づく曲線の理論.この序説を基礎理論として,その上に微分法と積分法が構築されていくという構成様式はオイラー以降も継承され,今日の微積分のテキストのモデルになりました.