最低賃金が家計所得に与える影響

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2019.01.31
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Dube, Arindrajit “Minimum Wages and the Distribution of Family Incomes,” American Economic Journal: Applied Economics, Forthcoming.

明坂弥香

$\def\t#1{\text{#1}}\def\varII{I\kern-.2emI}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

皆さんは、現在の最低賃金がいくらかご存知だろうか? 「外国人技能実習生の賃金が最低賃金を大きく下回っていた」という報道を頻繁に耳にしても、それが具体的にいくらを指すのかわからない人が多いのではないだろうか。日本の最低賃金は都道府県単位で定められ、毎年10月上旬に改正が行われる1)。2018年10月の改正では、平均最低賃金は874円(最低:鹿児島県761円、最高:東京都985円)とされた。OECDが試算した世界の実質最低賃金ランキング(2017年)によると、日本の最低賃金水準は先進国の中では最下位に近い水準となっている。

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脚注   [ + ]

1. 正確には、日本の最低賃金は都道府県ごとに定められ、全労働者が適用対象である地域別最低賃金に加え、特定地域における特定産業の労働者が対象である産業別最低賃金の 2 種類がある。しかし、産業別最低賃金は適用対象の労働者の割合が地域別最低賃金に比べるときわめて低く、廃止の方向にあると言われている。