(第12回)線型代数の泉—オイラーの曲線論より
数学の泉(高瀬正仁)| 2019.09.02
数学に泉あり。数学は大小無数の流れで構成されていて、今も絶え間なく流れ続けている雄大な学問ですが、どの流れにも源泉があり、しかもその源泉を作った特定の人物が存在します。共感と共鳴。数学の泉の創造者たちの心情と心を通わせることこそが、数学を理解するという不思議な体験の本質です。そこで数々の泉を歴訪して創造の現場に立ち会って、創造者の苦心を回想し、共感し、共鳴する糸口を目の当たりにすることをめざしたいと思います。
(毎月上旬更新予定)
$\def\dfrac#1#2{{\displaystyle\frac{#1}{#2}}}\def\t#1{\text{#1}}$
オイラーの著作『無限解析序説』(全 2 巻)の第 2 巻のテーマは曲線の理論で,オイラーの目に映じた解析幾何学の世界が開かれています.曲線を方程式により表示するというアイデアはデカルトにさかのぼります.その際,方程式の基礎となる座標系の取り方は任意ですから,方程式の形はひと通りではなく,同一の曲線を表す無数の方程式がありえます.そこで,外見上著しい相違が見られる二つの方程式が提示されたとして,それらが表す曲線ははたして同一なのかどうか,その判定はどのように行われるのだろうかということが問題になります.