(第12回)補足的証言と、外務省外交史料館保管資料に見る事件の経緯
渋谷重蔵は冤罪か?―19世紀、アメリカで電気椅子にかけられた日本人(村井敏邦)| 2019.08.22
日本開国から24年、明治の華やかな文明開化の裏側で、電気椅子の露と消えた男がいた。それはどんな事件だったのか。「ジュージロ」の法廷での主張は。当時の日本政府の対応は。ニューヨーク州公文書館に残る裁判資料を読み解きながら、かの地で電気椅子で処刑された日本人「渋谷重蔵」の事件と裁判がいま明らかになる。
(毎月下旬更新予定)
補足的証言
最後に検察官から船員宿の主人夫婦に対する補足的質問が行われた。
まず、主人に対して、検察官は、大きく分けると、①船員用収納箱の場所について、②船員たちは、サイコロ賭博をしていたかどうかについて、③事件当時、現場にいた船員たちについての3点について質問した。
①については、当初、主人は、船員用収納箱は、事件現場にはなく、その隣の船員の寝室とされているところにあったような証言をしていたが、その後、事件現場となった部屋にも簡易ベッドがいくつかおかれ、その周りを取り囲むように収納箱があったというような証言に代わった。収納箱は、その他の物と一緒に、ベッドを隠すように置かれていたようである。
②については、主人は、終始否定した。
③については、被告人の証言とちがい、主人の前の証言で述べた船員たちが現場にいたと証言した。
最後に、主人の妻のジョセフィーヌが証言した。