(第12回・最終回)弁護士の診断士資格取得の必要性について
「弁護士×経営支援」のススメ(中村 真)| 2019.09.11
2018年、ついに衰えを見せ始めた司法制度改革の残り火の中、益々過酷さを増す業界での生き残りを賭けて中小企業支援に乗り出した弁護士中村真。この連載は、一地方弁護士が法律業務と経営支援の狭間で目にした数々のドラマを、「弁護士×経営支援」を合い言葉に、各種方面の目を気にしつつも、ただ面白おかしく書き連ねる実験的な企画です。
(毎月上旬更新予定)
1 「弁護士は経営のことはわからない」というドグマからの脱却
これまで、弁護士が中小企業の経営支援に携わっていくべきことについて、延々11回かけて触れてきました。
今回は、その締めくくりとして、弁護士が中小企業診断士資格を取得することの意味について改めて深く考えたいと思います。
私は、もともと就職した事務所の依頼者に中小企業が多かったので、弁護士登録の直後から、比較的多くの中小企業法務に携わることができました。
ただ、その内容は、契約書の作成・精査や新規事業展開時の法適合性のチェックといった予防法務的業務、労使紛争や取引先・顧客との法的紛争の処理など、法的問題が中心で、経営的課題の解決についての相談はほとんどありませんでした。
マスコットキャラクターのデザインについて意見と感想を求められたことがあった程度でしょうか。勿論、仕事の成果もフィーも発生していません。
この12回の連載の冒頭に書いたように、中小企業の経営者は弁護士には経営の問題を相談してはいけないという意識があると指摘しました(第1回参照)。それはまた、中小企業経営が数字(カネ)と密接に関わるトピックであり、主に税理士や公認会計士の関与すべき分野であると彼らが考えていることの裏返しでもあります。