『続AIにできること、できないこと—すっきり分かる「最強AI」のしくみ』(監修:藤本浩司,著:柴原一友)
はじめに
最近のAIは、研究者でも驚くほど急速に進化しています。その進化の原動力となっているのがディープラーニングです。この技術の誕生は、人間を超えるほどの「画像を捉える力」をAIにもたらしました。その数年後にはゲーム(囲碁や将棋)でも、人間を超える力を実現しています。さらに驚くべきことに、言語を扱う力、いわゆる読解力においても、人間に比肩するくらいにまで到達してきているのです。
AIの研究は日進月歩です。新しい技術が今も発案され続けています。その積み重ねの結果として、いろいろな分野で人間を超えうる、いわば「最強AI」が誕生しています。
そんな急速な進化を遂げるAIと協力して、これからのビジネス社会で生きていくためには、AIを正しく理解することが必要不可欠となるでしょう。協力し合うには相手を知ることが重要です。「仕事を奪われる」といった不安に怯えないためにも、AIについて無関心にならず、「AIはただの道具」だと思考停止したりもせず、AIの実態を知ろうとすることが大切です。
そんな思いから、「これまでAIについて調べたこともない」という方でもAIの実態がすっきり分かるようにと、『AIにできること、できないこと — ビジネス社会を生きていくための4つの力』(2019年刊行)を執筆しました。そこでは、AIの実態やできること、できないことが納得できるようになることを目指しましたが、小難しい技術的な話にはあえて触れませんでした。そのため、「技術的な面をもっと知りたい」という人も多かったのではないかと思います。
そこで本書ではAIを形作る技術に焦点を当てて、実態を深く理解できるようになることを目指しています。しかし、技術の話となると「難しそうだ」と尻込みしてしまう方もいるでしょう。この本では、難しい数式は一切使わずに、かつ要点をおさえて分かりやすく説明するようにしています。そして本書だけで理解できるように、必要な前提知識から説明をしています。
本書では以下の三点を大きな特徴としています。
1. AIの知識がない方でも、AIの最先端研究の話が分かるようになる
AIは急激に進化しているため、技術面を理解するのはとても大変です。最近ではAIブームのおかげもあって、技術面を解説する良書がたくさん刊行されています。しかし、数学的な基礎理論からはじまっていたり、これまでに誕生した数々の技術に幅広く触れていたりすることが多く、初めて学ぶ方にはなかなか分かりづらいのが実情です。
そこで本書では、触れる範囲をあえて「画像」「言語」「ゲーム」という各分野での「最強AI」に絞っています。今のAIを短時間で深く理解しようと思ったら、最先端技術がつまった「最強AI」に絞って理解するのが近道だからです。
もちろん、「最強AI」を理解するのは容易ではありません。そこで本書では、AIについての事前知識がない方でもすっと理解できるように、説明を分かりやすく、かつ本質を捉えられるように心がけています。だからといって、説明する内容を浅くしているわけではありません。「最強AI」を形作る要素のほとんどを網羅していますので、AI技術に詳しい方でも理解を深められる内容となっています。
2. 難しい専門用語を感覚的に理解できる
前作では理解の妨げとならないよう、専門用語はあえて使いませんでした。しかし、今のAI界隈では技術の発展に伴い、日常的に専門用語が多用されています。専門用語の理解が進まないと分かった気になれない、他人と話をすることができない、というのが実情でしょう。
本書では、よく使われる専門用語について感覚的に分かりやすく説明することで、他人と話ができるくらいに専門用語を理解できることを目指しています。だからといって、簡単なたとえ話で説明してしまうと、正しい理解につながりません。そこで、読者がその後でより深く学ぼうとした際に妨げとならないよう、可能な限り正しい理解ができる表現を心がけています。
そのため、AIについてまったく知らないという人だけでなく、学んでいる最中だけれど正しい理解がつかめていないと感じている人にとっても価値ある内容となっています。もちろん、本書を読み終えた段階で専門用語すべてを頭に入れることは難しいでしょうが、その後も引き続きAIの手引書として活用してもらえればと思います。
3. 最先端AIを知ることで、AIにできること、できないことがよりはっきりと分かる
本書では、人間に匹敵してきている三つの分野における「最強AI」の実態を明らかにすることで、今のAIの現実が把握できるようになることを目指しています。幅広い分野にわたるAIの最先端を技術の面からひも解ければ、「AIにできること、できないこと」に対する理解は、より深いものになることでしょう。
なお、今日もまた新しい技術が誕生しているため、「最強AI」の座は常に変わり続けています。本書で取り上げる「最強AI」とは、「今のAI研究の主軸を作り上げ、以降の研究に多大な影響を与えたAI」という意味で使っています。これらのAIの実態を知ることは、現在だけでなく未来のAIの展望を感じる上でも、きっと役に立つことでしょう。
「最強AI」で使われている技術は最先端ですので、決してやさしい内容ではありません。そのすべてをいきなり理解することは、いかに説明が分かりやすくても負担がないとはいえないでしょう。そこで、本書では重要な点を本文でお話しし、主要な部分ではないけれど大切な話については、ステップアップという節を設けて分けて説明しています。さらにもっと細かな話については、巻末の注で補足する形をとっています。こういった段階的な形をとることで、重要な点に絞って理解したい人にも、また細かい点を把握したい人にも、満足できる内容となっています。
それではいよいよ、最強AIについて知る旅を始めたいと思います。ぜひ最後までお付き合いください。
目次
- 1章 最強AIへの導入
最強AIを理解するための準備/最強AIの作り方の基本をおさえる/最強AIの実態を捉えるための観点をおさえる/4つの力の観点で見る、今のAIの実態/最強AIの中心技術のしくみをおさえる/まとめ - 2章 ResNet(レズネット)
導入/実態/できること、できないこと/補足 - 3章 BERT(バート)
導入/実態/できること、できないこと/補足 - 4章 AlphaZero(アルファゼロ)
導入/実態/できること、できないこと
書誌情報など
- 『続AIにできること、できないこと—すっきり分かる「最強AI」のしくみ』
- 監修:藤本浩司,著:柴原一友
- 紙の書籍
- 定価:税込2310円(本体価格2100円)
- 発刊年月:2019年11月
- ISBN:978-4-535-78902-9
- 判型:四六判
- ページ数:272ページ
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