(第16回)犯行着衣等に血痕反応がないとする鑑定書を隠匿したまま起訴し死刑判決を受けさせた─松山事件

捜査官! その行為は違法です。(木谷明)| 2019.12.11
なぜ誤った裁判はなくならないのか――。
警察官、検察官の証拠隠しや捏造、嘘によって、そしてそれを見抜かなかった裁判所によって、無実の人が処罰されてしまった数々の冤罪事件が存在します。
現役時代、30件以上の無罪判決を確定させた元刑事裁判官・木谷明氏が、実際に起こった事件から、刑事裁判の闇を炙り出します。

(毎月中旬更新予定)

松山事件

  • 仙台地決昭和54年12月6日判時949号11頁
  • 仙台高決昭和58年1月31日判時1067号3頁
  • 仙台地判昭和59年7月11日判時1127号34頁
  • 仙台地判平成3年7月31日判時1393号19頁
  • 仙台高判平成12年3月16日判時1726号120頁

本事件で、警察は、別件逮捕したSさんに、被害者一家4人を薪割り様のもので皆殺しにしたという自白をさせた。しかし、犯行当時着用していたはずのジャンパーやズボンのほか、帰宅後寝た寝具(掛け布団)にも血痕の付着が見られず、そのことは警察段階での鑑定で明らかだった。ところが検察官は、これら鑑定書を隠匿したままSさんを起訴し、死刑判決を受けさせたのである。

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について

木谷 明(きたに・あきら 弁護士)
1937年生まれ。1963年に判事補任官。最高裁判所調査官、浦和地裁部総括判事などを経て、2000年5月に東京高裁部総括判事を最後に退官。2012年より弁護士。
著書に、『刑事裁判の心―事実認定適正化の方策』(新版、法律文化社、2004年)、『事実認定の適正化―続・刑事裁判の心』(法律文化社、2005年)、『刑事裁判のいのち』(法律文化社、2013年)、『「無罪」を見抜く―裁判官・木谷明の生き方』(岩波書店、2013年)など。
週刊モーニングで連載中の「イチケイのカラス」(画/浅見理都 取材協力・法律監修 櫻井光政(桜丘法律事務所)、片田真志(古川・片田総合法律事務所))の裁判長は木谷氏をモデルとしている。