生産性と研究開発活動:個票データによる分析

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2020.07.14
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Doraszelski, Ulrich and Jordi Jaumandreu (2013) “R&D and Productivity: Estimating Endogenous Productivity,” Review of Economic Studies, 80(4), pp.1338-1383.

遠山祐太

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はじめに

企業の生産性は多くの経済モデルにおける重要な構成要素の一つであり、その実証的な研究は産業組織論、マクロ経済学、そして国際貿易論と幅広い分野において着目されてきた。一般に生産性はデータ上で直接観察できるものではなく、産出物・投入物のデータを用いて推定・測定されるものである。

近年では、企業や工場レベルでの個票データの利用可能性が向上していると同時に、個票データを分析する手法であるミクロ計量経済学の発展も著しい。その結果として、さまざまな国・産業における生産性に関する理解が進んできた。一連の実証研究の中で得られた知見の一つとして、同一産業内における企業間の生産性の格差が大きいということが挙げられる。例として Syverson (2004)は、米国の標準産業分類(Standard Industrial Classification; SIC)ごとに生産性分布をみると、分布の上位 $10\%$ 点の企業の全要素生産性は下位 $10\%$ 点の企業の約 $2$ 倍になることを発見している。したがって、どのような要因が企業間の生産性の大きな差を生んでいるのかが、次なる研究課題として注目されつつある。

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