避難所がかかえる問題(津久井進)
特集/避難所に入れない?!―3.11に避難所について考える| 2020.03.11
特集/避難所に入れない?!―3.11に避難所について考える
日本は地震、台風、豪雨などの災害が多く、「災害大国」といわれています。
2019年の台風19号(令和元年東日本台風)では、猛烈な風と大雨による甚大な被害が出ました。しかし、SNS上では、「避難所への入所を断られた」という投稿が散見され、議論となりました。
災害が起こった場合、避難所は避難したい人を十分に受け入れることができるでしょうか。本特集では避難所のあり方について考えます。
日本は地震、台風、豪雨などの災害が多く、「災害大国」といわれています。
2019年の台風19号(令和元年東日本台風)では、猛烈な風と大雨による甚大な被害が出ました。しかし、SNS上では、「避難所への入所を断られた」という投稿が散見され、議論となりました。
災害が起こった場合、避難所は避難したい人を十分に受け入れることができるでしょうか。本特集では避難所のあり方について考えます。
1 避難所の目的
避難所の最大の目的は「被災者の生命を守る」ところにあります。避難所に関連する諸課題を考察するときは、被災者の生命・健康の保護を常に念頭に置く必要があります。
避難所は被災者の身を守るためのシェルターですが、避難所の運営のあり方は災害関連死のリスクに直結します。また、避難所は重要な情報拠点、災害後のコミュニティ再生の起点にもなるわけで、被災者のその後の生活再建プロセスを左右します。
こうした避難所の存在の重要性から課題は多岐にわたりますが、その解釈・運用において最重視すべき法益が「被災者の生命」であるという視点を決して忘れてはなりません。
2 避難所の法的根拠
避難所は、「避難のための立退きを行った居住者、滞在者その他の者を避難のために必要な間滞在させ、又は自ら居住の場所を確保することが困難な被災した住民その他の被災者を一時的に滞在させるための施設」をいいます(災害対策基本法49条の7)。「避難所」は、津波などの災害発生時または発生のおそれがあるときに災害から避難するために身を寄せる「避難場所」(同法49条の4)とは異なります。東日本大震災では、釜石市の指定「避難所」であった鵜住居地区防災センターが「避難場所」ではないことを住民に適切に周知しなかったため同所に避難した数多くの避難者が津波で死亡したとして訴訟が提起されましたが(2018年7月3日仙台高裁で和解成立)、両者の相違についての理解が浸透しているとはいいがたいところです。
津久井進(つくいすすむ)
1969年生まれ。弁護士。日本弁護士連合会災害復興支援委員会委員長。一人ひとりが大事にされる災害法をつくる会共同代表。阪神・淡路大震災以来、被災者に対する法的支援、立法提言などに取り組む。著書に『Q&A被災者生活再建支援法』(商事法務、2011年)、『大災害と法』(岩波新書、2012年)、『災害ケースマネジメント◎ガイドブック』(合同出版、2020年)など。
1969年生まれ。弁護士。日本弁護士連合会災害復興支援委員会委員長。一人ひとりが大事にされる災害法をつくる会共同代表。阪神・淡路大震災以来、被災者に対する法的支援、立法提言などに取り組む。著書に『Q&A被災者生活再建支援法』(商事法務、2011年)、『大災害と法』(岩波新書、2012年)、『災害ケースマネジメント◎ガイドブック』(合同出版、2020年)など。