(第9回)統計検定と確率 — なぜ確率という考えが必要となるのか

現実を「統計的に理解する」ための初歩の初歩(麻生一枝)| 2020.07.15
私達が生きる現実社会の多くの問題の理解には,種々の数値の測定や観察とそれを「統計的に処理する」作業が欠かせません.毎日のニュースでもありとあらゆる機会に「数値」が出てきますが,その意味をきちんと考えたり信憑性を疑うことは、必ずしもなされていないようです.この連載では,誰でも知っておいてほしい統計についての基本的な考え方や, 統計にまつわる誤解や陥りやすい罠を紹介していきたいと思います.(全12回の予定)

(毎月中旬更新予定)

$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

前回の「統計検定の考え方 — $p$ 値って何? 統計的有意差って何?」を読んで,$p$ 値や統計的有意差はなんとなくわかったけど,そもそもなんで確率なんてものが出てくるんだ,と疑問に思った読者も少なからずいたのではないだろうか.

実は,確率という考え方,そして確率を算出するための統計検定は,「ある集団について何かを知りたいとき,集団構成員全体を調べるのではなく,それを代表するような (サンプル) 調」という科学の方法と密接に関係している.観察的研究であれ実験的研究であれ,また,文系・理系や,分野の違いを問わず,科学研究とは切り離せないものだ.

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麻生一枝 成蹊大学非常勤講師、長浜バイオ大学非常勤講師.お茶の水女子大学理学部数学科卒業,オレゴン州立大学動物学科卒業,プエルトリコ大学海洋学科修士,ハワイ大学動物学Ph.D. 専門は動物行動生態学.「統計や実験デザインの理解は健全な科学研究に必須である」という信念のもと,これらの教育の普及に熱意を持って取り組む.著訳書に『科学でわかる男と女になるしくみ』 (SBクリエイティブ),『実データで学ぶ,使うための統計入門 ---データの取りかたと見かた』(共訳,日本評論社), 『生命科学の実験デザイン』(共訳,名古屋大学出版会)など.