コロナ禍が示す株主総会の未来像(舩津浩司)

法律時評(法律時報)| 2020.06.29
世間を賑わす出来事、社会問題を毎月1本切り出して、法の視点から論じる時事評論。 それがこの「法律時評」です。
ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。

(毎月下旬更新予定)

◆この記事は「法律時報」92巻8号(2020年7月号)に掲載されているものです。◆

1 “異例”な今年の株主総会

今年の上場会社の株主総会は普段と様相を異にしている。株主に会合の存在を知らせて集合を呼びかけるはずの招集通知に「極力来場するな」という趣旨が強調されて表示され、また、株主総会の会場とされる場所に行っても役員はいない、という状況もあったと聞く。

2020年6月号(1,750円+税)

これらの対応が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止のための措置であることは、本誌を新刊で手にした読者にとっては自明のことであろう。いや、この原稿を脱稿してから6月末に発刊されるまでの間に、そのことすら自明ではなくなるほどに状況が大きく改善していることが、社会全体にとっては望ましいことなのかもしれない。

とはいえ、そのような“異例の”実務対応は、多くの場合、爆発的な感染拡大の兆候が見られた段階から社内で対応策が慎重に検討され、そのための準備を整えたうえで公表され、実行に移されたものであることは想像に難くない。対応策の検討開始から実施まで2ヶ月程度のタイムラグがあると考えられ、その間の状況の変化を反映して株主総会を実施することは相当困難であることを、各社の対応を外から眺めている者は強く心に留めておくべきであろう1)

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脚注   [ + ]

1. 状況の悪化から回復までの変化が急激であった場合、状況の悪化の兆候が見られる段階で真摯に対応を考えて公表をし、それを実施したA社の対応と、状況悪化時に何も対応を考えず結果的に従来通りの実施となったB社の対応とを外部の人間が見比べた場合、実施の時点において状況が回復している限りにおいて、適切なのはB社の対応であってA社の対応は時代遅れに映ってしまう、という不合理は心に留めておくべきであろう。