序文(特別企画:ひきこもりに現場で向き合う)(編:二宮貴至)

特別企画から(こころの科学)| 2020.07.20
心理臨床、精神医療、教育、福祉等の領域で対人援助にかかわる人、「こころ」に関心のある一般の人を読者対象とする学術教養誌「こころの科学」。毎号の特別企画では、科学的知見の単なる解説ではなく、臨床実践に基づいた具体的な記述を旨としています。そうした特別企画の一部をご紹介します。

(毎月中旬更新予定)

◆本記事は「こころの科学」212号(2020年7月号)の、二宮貴至編「ひきこもりに現場で向き合う」に掲載されている序文です。◆

今、世界中の人々が新型コロナウイルスによる健康上のリスクに晒され、さらには孤立と分断の危機に瀕している。私たち自身がひきこもることを強いられているこの災厄のただ中で、本特別企画を組むことを因果に思う。

昨年の今頃は、40歳から64歳までのひきこもりが若年層を上回る61万人と内閣府が公表し、川崎市の通り魔事件と、元官僚による長男殺害事件が立て続けに起こったことから、「ひきこもり」に関連した議論が炎上していた。社会問題として繰り返される報道や感情的な議論に対して、当事者やそこに向き合う支援者の姿にまで焦点が当てられる機会は少なく、当事者の「私はあのように見られているのか」との不安に、支援者は「あなたはあなたです」と伝え続ける必要があった。そこには今に通じる分断と、さらなる孤立の危機があったように思う。

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