「接触確認アプリ」の導入問題から見える課題(曽我部真裕)
法律時評(法律時報)| 2020.07.27
世間を賑わす出来事、社会問題を毎月1本切り出して、法の視点から論じる時事評論。 それがこの「法律時評」です。
ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。
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(毎月下旬更新予定)
◆この記事は「法律時報」92巻9号(2020年8月号)に掲載されているものです。◆
1 はじめに
新型コロナウイルス感染の世界的広がりは、大は国際秩序のレベルから、小は個人の日常生活のあり方まで、大きな変化を迫っており、法学の観点からもすでに様々な議論がはじまっているところである。その無数の論点のうちの1つとして、感染症対策にデジタル技術、とりわけ個人に由来する情報(法律上の「個人情報」よりは範囲が広い)の利活用技術をどのように用いるべきかというものがある。
国際的に見てデジタル技術の活用によるコロナ対策に慎重であった日本において、デジタル技術活用の議論を象徴する存在が、「接触確認アプリ」(各種の名称があるが、ここではこれで統一する)である。これには国内法適合性の問題のほか、その社会的な受容に関する議論にも注目されるし、各国で同様の取り組みがなされたため、国際比較から抽出できる論点もあって興味深い1)。
このプロセスは、陽性者でない者が故意または過失により陽性である旨の登録をすることを避けるためのものである。))。なお、本稿では触れられないが、国や地方自治体でコロナ対策のためにデジタル技術を活用した事例はほかにも多少はあって、それぞれ今後検証が行われるべきであろう。
脚注
1. | ↑ | 国際比較も含む包括的な検討として、高橋郁夫ほか『新型コロナウイルス対プライバシー─コンタクトトレーシングと法』(Amazon Kindle、2020年)が重要である((このプロセスは、陽性者でない者が故意または過失により陽性である旨の登録をすることを避けるためのものである。 |