(第13回)統計検定の限界 —「効果あり」と断定はできないし、「効果なし」ともいえない
現実を「統計的に理解する」ための初歩の初歩(麻生一枝)| 2020.11.09
私達が生きる現実社会の多くの問題の理解には,種々の数値の測定や観察とそれを「統計的に処理する」作業が欠かせません.毎日のニュースでもありとあらゆる機会に「数値」が出てきますが,その意味をきちんと考えたり信憑性を疑うことは、必ずしもなされていないようです.この連載では,誰でも知っておいてほしい統計についての基本的な考え方や, 統計にまつわる誤解や陥りやすい罠を紹介していきたいと思います.
(毎月中旬更新予定)
喜ばしいことに、この連載が延長されることになった。正直に白状すれば、12 回という限られた回数だったので、連載のタイトル通りの「初歩の初歩」から、一般読者にとってはそうとは言い難い、学術論文に登場する統計の間違いまで、一挙に突っ走ってきてしまったというのが実情である。「初歩の初歩って書いてあるのに、途中から突然むずかしくなったなあ」と感じた読者も、確実にいたと思う。それも、少なからずいたと思う。
というわけで、今回は、「重要で本当は書いたほうがいいのだけど、はっきりと文章にしなくても、この内容を理解すれば、自然とわかるだろう」と飛ばしてしまった話題を取り上げたいと思う。第 8 話「統計検定の考え方とは — $p$ 値って何? 統計的有意差って何?」と第 9 話「統計的有意差と確率 — なぜ確率という考えが必要となるのか」と関連した内容である。
麻生一枝 成蹊大学非常勤講師.お茶の水女子大学理学部数学科卒業,オレゴン州立大学動物学科卒業,プエルトリコ大学海洋学科修士,ハワイ大学動物学Ph.D. 専門は動物行動生態学.「統計や実験デザインの理解は健全な科学研究に必須である」という信念のもと,これらの教育の普及に熱意を持って取り組む.著訳書に『科学でわかる男と女になるしくみ』 (SBクリエイティブ),『実データで学ぶ,使うための統計入門 ---データの取りかたと見かた』(共訳,日本評論社), 『生命科学の実験デザイン』(共訳,名古屋大学出版会)など.