序文(特別企画:コロナが変える社会とこころ)(編:宮岡等)
特別企画から(こころの科学)| 2020.12.17
心理臨床、精神医療、教育、福祉等の領域で対人援助にかかわる人、「こころ」に関心のある一般の人を読者対象とする学術教養誌「こころの科学」。毎号の特別企画では、科学的知見の単なる解説ではなく、臨床実践に基づいた具体的な記述を旨としています。そうした特別企画の一部をご紹介します。
(毎月中旬更新予定)
◆本記事は「こころの科学」215号(2021年1月号)の、宮岡等編「コロナが変える社会とこころ」に掲載されている序文です。◆
2020年初頭から世界中に拡がった新型コロナウイルス感染症は、私たちの暮らしを変え、これまでにない種類のストレスを心身に与えている。最初は感染した方の抑うつやその家族への偏見、感染するのではないかという恐れ、医療スタッフの負担やその家族への影響に関する懸念が主であったが、問題はすぐに社会全体に拡がった。企業では在宅勤務が業務内容を変えるだけでなく、自宅で仕事をするという環境変化が家族関係にも変化をもたらしている。また飲食業では、客数の減少が危機的状況を招いている。他方、学校ではネットを介した授業も始まり、子どもたち同士の接触の機会が減少した。そのことは、学校には知識を得ることだけでなく、人間関係を経験するという、ともすると忘れがちな大きな意義があることを教えてくれているように思える。