(第3回)言葉を道具として、武器として使うことに遅れをとってしまう

日本のリーダーはなぜ決められないのか――経営に活かす精神分析(堀有伸)| 2022.03.23
経営における意思決定に、深層心理はどのような影響を与えているでしょうか。この連載では、日本の文化や慣習が組織のリーダーの「決断」にどのような影響を与えているかを、MBAで学んだ精神科医が、精神分析理論等を参照しながら明らかにしていきます。

(毎月下旬更新予定)

企業の社会的責任、CSRとCSVについて

近年、営利企業であっても、顧客や株主、従業員といった直接のステークホルダーだけではなく、広く社会全体に対しても責任を果たすことが求められるようになってきている。そうしたなかで注目されるようになった言葉が、CSR(Corporate Social Responsibility)1)である。法令の遵守や利害関係者に対する説明責任から、災害支援や地域の問題解決に取り組むことまで、幅広い活動がこの概念に含まれている。企業の側にも、社会的な課題に進んで取り組むことで、自社のブランド価値を高め、有能な人材を確保しやすくなるといったことから、長期的成長を果たすためにCSRの観点が有益であるという認識が強まっている。

一方で、CSRについては、営利の追求という本業の余剰で行う「建前としての善行」というイメージが根強く残っていることも否めない。もともと社会の公器としての役割を期待されている大企業であっても、その活動は「CSR予算」内のものに限られていることがほとんどである。中小企業であれば、CSRに取り組む余裕などないと考えられている場合も少なくない。

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脚注   [ + ]


堀 有伸(ほり・ありのぶ)

精神科医。1997年に東京大学医学部卒業後、都内および近郊の病院に勤務しながら現象学的な精神病理学や精神分析学について学んだ。2011年の東日本大震災と原発事故を機に福島県南相馬市に移住し、震災で一時閉鎖された精神科病院の再開に協力した。2016年、同市内に「ほりメンタルクリニック」を開業。開業医となった後にグロービス経営大学院で学ぶ。著書に『日本的ナルシシズムの罪』(新潮新書)、『荒野の精神医学』(遠見書房)。