(第10回)経営者の孤独に耐える力

日本のリーダーはなぜ決められないのか――経営に活かす精神分析(堀有伸)| 2022.10.21
経営における意思決定に、深層心理はどのような影響を与えているでしょうか。この連載では、日本の文化や慣習が組織のリーダーの「決断」にどのような影響を与えているかを、MBAで学んだ精神科医が、精神分析理論等を参照しながら明らかにしていきます。

(毎月下旬更新予定)

親子はいつまで一緒にお風呂に入るべきか――アメリカでの『となりのトトロ』をめぐる論争

2022年に入ってから、アメリカで放映された『となりのトトロ』のあるシーンが問題視された。『となりのトトロ』は宮崎駿監督による長編アニメ映画で、昭和30年代前半の日本を舞台に、サツキ(12歳)とメイ(4歳)の姉妹と、不思議な存在であるトトロとの交流を軸にストーリーが進んでいく物語である。問題になったのは、サツキとメイが父親と一緒に入浴するシーンだ。日本人の多くは、このシーンに違和感をもたないだろう。しかしアメリカ社会は、このシーンについて「児童虐待」のおそれありと判断し、やんわりとだが嫌悪の感情と弾劾の意思を表明してきた。二つの社会の感覚の違いを意識させられる出来事だった。

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堀 有伸(ほり・ありのぶ)

精神科医。1997年に東京大学医学部卒業後、都内および近郊の病院に勤務しながら現象学的な精神病理学や精神分析学について学んだ。2011年の東日本大震災と原発事故を機に福島県南相馬市に移住し、震災で一時閉鎖された精神科病院の再開に協力した。2016年、同市内に「ほりメンタルクリニック」を開業。開業医となった後にグロービス経営大学院で学ぶ。著書に『日本的ナルシシズムの罪』(新潮新書)、『荒野の精神医学』(遠見書房)。