(第19回)日本近代史のなかの沖縄―帝国における差別と同化(戸邉秀明)

おさらい日本の近現代史―「日本」と東アジアの関係を読み解くために| 2023.02.28
日本の近代・現代とはどのようなものだったのでしょうか。
私たちが今、日々ニュースで接する日本の社会状況や外交政策を、そのような歴史的視点で捉えると、いろいろなものが見えてきます。
この連載では、「日本」と東アジア諸国との関係を中心に、各時代の象徴的な事件などを取り上げ、さまざまな資料の分析はもちろん、過去の事実を多面的に捉えようとする歴史研究の蓄積をふまえて解説していただきます。
現在の日本を作り上げた日本の近現代史を、もう一度おさらいしてみませんか。

(毎月下旬更新予定)

昨年(2022年)は、沖縄が日本に復帰してから半世紀という節目の年でした。「復帰の日」の5月15日を前後して、新聞やテレビでは、基地問題など沖縄の現状だけでなく、歴史についても頻繁に取り上げられました。ニュースやドキュメンタリーだけではありません。たとえば沖縄出身の主人公が活躍したNHK連続テレビ小説(いわゆる「朝ドラ」)「ちむどんどん」では、主人公の家族の秘められた過去に、沖縄戦が暗い影を落としていました。

このように注目が集まるのは嬉しいのですが、ちょっと気になる点もあります。取り上げられる「沖縄の歴史」といえば、沖縄戦に集中しがちだからです。もちろん、県民の4人に1人が亡くなったほどの悲惨な地上戦に、関心が注がれるのは当然でしょう。けれども、その悲惨さの原因や背景については、滅多にふれられません。そのため、「友軍」であるはずの日本軍兵士が住民を殺害する事件が多発したことや、一箇所で数百人規模の住民が亡くなった「集団自決」の事例が紹介されても、「戦場の狂気」といった説明で終わってしまいます。これでは、歴史に学んだとは言えません。

沖縄戦の戦場は、なぜ凄惨なものとなったのか。的確に理解するには、近代になって、沖縄が日本に組み込まれて以来の歩みを知る必要があります。細かい年代は要りません。大まかでよいので、沖縄が複雑な歴史を歩んだがゆえに、私たちの日本史像を覆すような場所であること、その点をつかみ取ることが大切です。

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戸邉秀明(とべ・ひであき)
東京経済大学全学共通教育センター教授。専門は沖縄近現代史、特に戦時期の「方言論争」や、戦後の在本土沖縄県人の組織化、米軍占領期における学校教員を中心とする復帰運動の研究などを進めている。
主著に、『触発する歴史学──鹿野思想史に向き合う』(共編著、日本経済評論社、2017年)、『記憶と認識の中のアジア・太平洋戦争──岩波講座アジア・太平洋戦争戦後篇』(共著、岩波書店、2015年)、『沖縄学入門』(共著、昭和堂、2010年)、『近代日本の「他者」と向き合う』共著、解放出版社、2010年)など。