(第10回)地域を分かつ境界の決まり方とその影響:東京都町田市が教えてくれるもの

歩いて学ぶ都市経済学(中島賢太郎・手島健介・山﨑潤一)| 2023.07.24
都心に高層オフィスビルが林立しているのはなぜ? 原宿にアパレルショップが集中しているのはなぜ? この連載では、日本各地の都市で見られる何気ない風景の「なぜ」を取り上げ、その背後にあると考えられる経済学的メカニズムを解説するとともに、そのメカニズムをデータを使って検証した最先端の実証研究を紹介していきます。

(毎月下旬更新予定)

はじめに

筆者の 1 人は東京都町田市で小中高時代を過ごした。市内最大の駅町田駅は新宿から電車で約 30 分の場所にあり、その周辺は多摩地域有数の商業地域である。他方、東京都 26 市のうち八王子市に次いで 2 番目に多い約 43 万人の人口を抱える町田市は豊かな自然も多く、住民に都市と自然両方の魅力を提供してくれている。図 1を見ればわかるように、その境界のかなりが東京都と神奈川県の県境になっており、特に駅が県境に近いという特徴がある。JR 町田駅のすぐ裏は神奈川県相模原市であるが、図 2でわかるように同じ構内に町田市と神奈川県相模原市の境界があるほどである。駅が県境に近いことは図 3 を見てもわかるように、他の町田市内の電車の駅のほとんどに当てはまる1)

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脚注   [ + ]

1. 例えば小田急線玉川学園駅から少し丘を登れば筆者の 1 人が幼稚園の頃に住んでいた奈良北団地 (神奈川県横浜市) が見えるし、小田急線鶴川駅のすぐ裏は神奈川県川崎市である。

中島賢太郎 (なかじま・けんたろう)
一橋大学イノベーション研究センター准教授。東京大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士 (経済学)。東北大学大学院経済学研究科准教授などを経て、2017年より現職。都市経済学・空間経済学を専門とする。スマートフォンGPSデータや歴史的データなど、幅広いデータを用いた実証研究を行っている。
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手島健介 (てしま・けんすけ)
一橋大学経済研究所教授。コロンビア大学経済学部博士課程修了 (Ph.D.)。メキシコ自治工科大学経済研究所助教授などを経て、2022年より現職。主にメキシコと日本のミクロデータをもとに、グローバリゼーションおよび都市にまつわる諸問題を研究している。
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山﨑潤一 (やまさき・じゅんいち)
神戸大学大学院経済学研究科講師。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス (LSE) 博士課程修了 (Ph.D.)。神戸大学大学院経済学研究科助教などを経て、2021 年より現職。開発経済学、応用ミクロ計量経済学を専門とする。明治期の鉄道や江戸期の農業投資など、日本の歴史的データを用いた実証研究を多く行っている。
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※本連載は、共同執筆です。著者順は慣例に従いアルファベット順としています。