(第11回)難民キャンプとこころのケア

紛争・災害と子どものこころのケア――世界の精神保健の現場から(田中英三郎)| 2023.08.04
2022年ロシアによるウクライナ侵攻は日本に住む私たちにも大きな衝撃を与えました。また、新型コロナウイルスのパンデミックや自然災害など、私たちの日常を一変させる出来事がいつやってくるかは予想もつきません。こういった出来事はすべての人々のこころに暗い影を落としますが、特に子どものこころへの影響は計り知れません。この連載では、世界と日本の現場から、子どもたちのこころの健康を保つためにどんなことがされているのか、レポートしていきます。

(毎月上旬更新予定)

2022年2月、COVID-19のオミクロン株が世界を席巻している中、私は一本の電話相談を受けました。ヨルダンで長くシリア難民支援のプロジェクトを展開されている日本のNGO「国境なき子どもたち(KnK)」の松永晴子さんからでした。

KnKは、ザアタリ難民キャンプという中東最大規模の難民キャンプで、2013年からキャンプ内の公立学校を支援されています。相談の内容は「深刻なメンタルヘルス上の悩みを抱えた生徒がいるため、どのようにサポートしていったらよいか一緒に考えてほしい」というものでした。当時、COVID-19のパンデミックのため、難民キャンプに立ち入ることはできませんでした。そこで、私はオンラインで、KnKの現地スタッフ(難民キャンプの公立学校で教師として働く方々)と会議を開き、現状を聞き取るとともにどのような対応が可能か議論しました。

今月は、日本の私たちにあまり馴染みのない難民キャンプがどのようなところか、紹介したいと思います。

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田中英三郎(たなか・えいざぶろう)
2001年愛媛大学医学部を卒業、精神科医師。ユニバーシティカレッジロンドン(UCL)等で社会疫学を研究、公衆衛生学修士、博士(医学)。国立国際医療研究センター、国境なき医師団、都立梅ヶ丘病院、兵庫県こころのケアセンター等を経て、2021年よりJICAヨルダン事務所・ヨルダン保健省精神保健政策アドバイザーを務めている。