(第23回)海外送達に感じるロマン

民事弁護スキルアップ講座(中村真)| 2023.11.14
時代はいまや平成から令和に変わりました。価値観や社会規範の多様化とともに法律家の活躍の場も益々広がりを見せています。その一方で、法律家に求められる役割や業務の外縁が曖昧になってきている気がしてなりません。そんな時代だからこそ、改めて法律家の本来の立ち位置に目を向け、民事弁護活動のスキルアップを図りたい。本コラムは、バランス感覚を研ぎ澄ませながら、民事弁護業務のさまざまなトピックについて肩の力を抜いて書き連ねる新時代の企画です。

(毎月中旬更新予定)

コロナも落ち着いてきて、再び海外との人の交流が活発になってきました。今回は、そんな海外と日本との架け橋になる営み、そう、民事訴訟における海外送達のお話です。

1 海外送達(外国においてすべき送達)とはなにか

たとえば、訴えたい相手方が国外にいるとき、訴訟はどのようにして起こせば良いのでしょうか。

刑事手続の公訴時効の停止(刑訴法255条1項)と異なり、民事上の請求権は、債務者(相手方)が海外にいたとしても進行は停止しませんから、刻一刻と迫るタイムリミットをただ座して待つのではなく、国内で訴訟を提起し、時効の完成猶予を勝ち取りに行くというのが日本人の在るべき姿、大和魂であるといえるかもしれません。

ここで問題となるのが、訴状や証拠を海外にいる被告にどうやって送達するかという問題です。

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中村真(なかむら・まこと)
1977年兵庫県生まれ。2000年神戸大学法学部法律学科卒業。2001年司法試験合格(第56期)。2003年10月弁護士登録。以後、交通損害賠償案件、倒産処理案件その他一般民事事件等を中心に取り扱う傍ら、2018年、中小企業診断士登録。2021(令和3)年9月、母校の大学院にて博士(法学)の学位を取得(研究テーマ「所得税確定方式の近代及び現代的意義についての一考察-我が国及び豪・英の申告納税制度導入経緯を中心として-」)。現在、弁護士業務のほか、神戸大学大学院法学研究科にて教授(法曹実務)として教壇に立つ身である。