(第14回)父母の年齢と生殖細胞遺伝子の変化:染色体の突然変異と DNA の断片化

ヒトの性の生物学(麻生一枝)| 2024.10.15
LGBTQ,少子高齢化,男女共同参画など,議論の的となっている社会テーマの多くは,ヒトの性と関係しています.「自分がどのようにして (how),自分になったのか」を知ることは,性的マイノリティの自己の確立に大きく影響し,また,年齢に伴う卵子や精子の老化は,私たちがどのようにキャリア形成とプライベートな生活 (結婚や家庭をもつなど) を両立していくかを考える上で,避けては通れない生物学的事実です.しかし現実には,様々な議論が,生物学抜きで,あるいは生物学の誤った解釈の下におこなわれており,責任ある立場の人々の誤った言説もあとを絶ちません.
このシリーズでは,私たちの人生に密接に関係する「ヒトの性に関する生物学的知見」を紹介していきます.

(毎月中旬更新予定)

カップルの年齢が上がるにつれ、妊娠率は下がり、流産率は上がり、母体への負の影響は増加する。しかし、それだけではない。カップルの年齢が上がるにつれ、生まれてくる子が何らかの先天性疾患をもっている可能性も大きくなる。そして、年齢が生殖に及ぼすこれらの影響の原因の 1 つと考えられているのが、生殖細胞の遺伝子に起こる変化である。

親の年齢と子の先天性疾患との関連を見た後、今回の主題である年齢にともなう卵子や精子の遺伝子の変化を見ていこう。

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麻生一枝 サイエンスライター,成蹊大学非常勤講師. お茶の水女子大学理学部数学科卒業,オレゴン州立大学動物学科卒業,プエルトリコ大学海洋生物学修士,ハワイ大学動物学Ph.D. (研究テーマは魚類の性分化・性転換).「健全な科学研究における統計学や実験デザインの重要性」「ジェンダー研究における生物学の重要性」という 2 つのテーマで活動してきている.著訳書に『科学でわかる男と女になるしくみ』(SBクリエイティブ),『生命科学の実験デザイン』(共訳,名古屋大学出版会),『科学者をまどわす魔法の数字,インパクト・ファクターの正体---誤用の悪影響と賢い使い方を考える』(日本評論社),『データを疑う力』(東京図書出版) など.