(第8回)言うまでもなく、がんばったらなんでもできるわけではない

プロ精神科医あるあるノート(兼本浩祐)| 2024.09.13
外来のバックヤード、あるいは飲み会などフォーマルでない場で、臨床のできる精神科医と話していると、ある共通した認識を備えていると感じることがあります。こうした「プロの精神科医」ならではの「あるある」、言い換えれば教科書には載らないような暗黙知(あるいは逆に認識フレームの罠という場合もあるかもしれません)を臨床風景からあぶり出し、スケッチしていくつもりです。

(毎月中旬更新予定)

アタックNo.1

この連載では、なぜか昭和のテレビ番組や映画が次々に頭に浮かんで困っています。絶対に、若い読者の方々は今、私の脳裏に浮かんでいる番組をご存じないと思うからです。たとえば、「苦しくたって 悲しくたって コートの中では 平気なの」というテーマソングが何か強迫観念のように頭に今でも浮かぶのですが、『アタックNo.1』は、スポ根ものと呼ばれるジャンルのマンガで、女子バレーボール部員がしごきに耐えて成長していく、よく言えばドイツの教養小説と類似ジャンルともいえるかもしれません。『巨人の星』とか『柔道一直線』とか数え上げればきりがありません。昭和の時代精神といってもいいかもというくらい誰もが見ていたと思います。

「なせばなる、やればできる」がそこでの合言葉でした。できないのは根性がないからです。これは日本だけの合言葉ではなくて、アメリカン・ドリームというものも似たようなところがあったと思います。

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について

兼本浩祐(かねもと・こうすけ)
中部PNESリサーチセンター所長。愛知医科大学精神神経科前教授。京都大学医学部卒業。専門は精神病理学、臨床てんかん学。『てんかん学ハンドブック』第4版、『精神科医はそのときどう考えるか』(共に医学書院)、『普通という異常』(講談社現代新書)など著書多数。