株主代表訴訟の意義を問い直す(加藤貴仁)
法律時評(法律時報)| 2024.07.26
世間を賑わす出来事、社会問題を毎月1本切り出して、法の視点から論じる時事評論。 それがこの「法律時評」です。
ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。
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(毎月下旬更新予定)
◆この記事は「法律時報」96巻9号(2024年8月号)に掲載されているものです。◆
1 問題意識
取締役としての義務に違反した者は会社に対して損害賠償責任を負う(会社法423条1項)。会社は取締役の責任追及を目的とする訴えを提起できるが、会社に代わって株主も同様の訴えを提起できる(会社法847条3項)。後者の訴えがいわゆる株主代表訴訟である。
取締役の責任追及を目的とする訴えが著名な上場会社や社会的に注目を集めた事件に関係するものであった場合、取締役の責任や株主代表訴訟に関連する様々な法制度にも注目が集まり、制度改正につながることがある。たとえば、大和銀行代表訴訟事件一審判決(大阪地判平成12年9月20日判タ1047号86頁)は、当時、取締役に過酷な損害賠償責任を課したことで注目を集めた。同判決は、それ以前から既に議員立法の準備が進められていた取締役の責任の一部免除・責任限定契約の導入を後押しする結果となった(平成13年12月改正後商法266条7項~23項・280条1項、会社法425条~427条)。