煙に隠れる男女格差:職場におけるタバコミュニケーションの弊害

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2024.09.27
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Cullen, Z. and Perez-Truglia, R.(2023) “The Old Boys’ Club: Schmoozing and the Gender Gap,” American Economic Review, 113(7): 1703-1740.
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北川梨津

はじめに

「タバコミュニケーション」という言葉がある。職場におけるタバコ休憩を通じたコミュニケーションのことである。タバコ部屋でたまたま居合わせた上司や部下と雑談することで信頼関係が構築されたり知識や情報が共有されたりして業務が円滑になる、という好意的な主張もしばしば見受けられる。一方で、2020 年 4 月には健康増進法の一部を改正する法律が施行されるなど、国民の健康増進の観点から喫煙に対する風当たりが年々強くなっている。かつてはどの職場にもあった「タバコ部屋」もなくされるか、あるいはオフィスの隅などに移されるようになっている。

タバコミュニケーションの信奉者にとって泣きっ面に蜂とも言える結果を提示しているのが今回紹介する Cullen and Perez-Truglia (2023) である。本論文は、上司と部下の間のタバコ休憩を通じたコミュニケーションに注目し、それが部下の昇格率と生産性に与える影響を推定しており、タバコミュニケーションが望ましくない帰結をもたらすことを明らかにしている。

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