(第3回)ジェイムス街84番地で殺人事件発生
渋谷重蔵は冤罪か?―19世紀、アメリカで電気椅子にかけられた日本人(村井敏邦)| 2018.11.19
日本開国から24年、明治の華やかな文明開化の裏側で、電気椅子の露と消えた男がいた。それはどんな事件だったのか。「ジュージロ」の法廷での主張は。当時の日本政府の対応は。ニューヨーク州公文書館に残る裁判資料を読み解きながら、かの地で電気椅子で処刑された日本人「渋谷重蔵」の事件と裁判がいま明らかになる。
(毎月下旬更新予定)
事件発生
1889年11月10日、ニューヨーク市警第4区警察署の警察官フレデリック・コートランダーは、担当のジェイムス街84番地付近をパトロール中、日本人Eymoto(以下[榎本])の経営する船員宿の中で言い争うような音が聞こえた後、しばらくして長い叫び声を聞いた。コートランダーはその宿のドアを蹴ったところ、中から鍵が開いた。彼が部屋の中に入ると、一人の男が胸につけられた傷から血を流して、テーブルの上に倒れていた。別の男が二人の男に押さえつけられ、もう一人の男が押さえつけられている男の足に縄をかけようとしているのを目撃した。コートランダーは、殺人事件と考え、近くをパトロールしていた別の警察官の応援を頼み、押さえつけられていた男(宿泊中の船員Schihiok Jugigo[渋谷重蔵])を同宿のMURA COMMI(以下[村上])を刺殺した容疑で逮捕した。